幸せのお裾分け

 

ある日の午後のことです。「三時のおやつ」が欲しくなった私がダイニングルームに
行くと、テーブル上に和紙やラミネートコーティングフィルムを広げて、妻が真剣に作
業をしていました。

私: 何を作っているの?

妻: 栞よ。

私: しおり?本に挟むアレかい?

妻: そうよ。今度の同期会で記念品を渡すことになったのだけど、集めた品物の種
   類がバラバラなのよ。抽選方法を考えているうちに、ふと思いついて「クローバ
   ーの葉」を使うことにしたの。
   ホラ、去年から今年にかけて四つ葉のクローバーをたくさん見つけたでしょ。
   それらを全部、ティッシュペーパーに包んで百科事典に挟んでおいたの。改め
   て数えてみたら三十枚近く貯まっていたわよ。貴重な五つ葉も含めてね。

私: 確かに次から次へとたくさん見つけたけど、そんなに集まったのかい。散歩途中
   で、五つ葉を一度に3本も見つけた日もあったよね。

妻: あの時は、NHK・朝ドラの決まり文句を借りれば「ビックリ ポン!」だったわね。
   「これは何かイイ事が起きる前兆かな?」と、チョッピリ浮き浮きしたわ。
   それはともかく、今回の出席者数が24名だから、「これは使える!」と思って作
   り始めたのよ。

私: ヘ~ェ、でも、出来上がった栞をどうやって抽選に使うつもりなの?

妻: この間、私の出身地であるY県の東京営業本部に出向いて頂戴して来た最新
   版の「Y県ゆかりのお店ガイドブックVOL.5」を見せたでしょ。
   首都圏の飲食店を紹介した、あの小冊子24冊にお手製の栞を挟んで持って行
   くのよ。そして、その小冊子を箱に入れて私が各テーブルを回って、一人ひとり
   に選び取ってもらうの。小冊子の上部から栞のリボンは覗いているけど、中の
   栞は見えないでしょ。もちろん、その時点では中の栞が抽選券になっているな
   んて、みんなには知らせないのよ。

私: 栞に番号でも書いておくのかな?

妻: 残念でした!それだったら、四つ葉のクローバーは必要ないじゃないの。

私: アァ、そうか。じゃあ、どうするの?

妻: クローバーの葉を中心にして数種類の違ったデザインのものを作るのよ。
   例えば、茎の部分にクローバー型シールを貼る、テントウ虫が付いたクロー
   バー型シールを貼る、黄色い紙で蝶を作りクローバーの上部に貼る、四つ葉
   と三つ葉をセットにして貼る、そして、ひとつしかない記念品用には「五つ葉の
   クローバーの上を青色の紙で作った蝶が飛ぶイメージ」で作るという具合にね。
   それぞれの記念品の数に応じて同じデザインのものを作り、一冊に一枚ずつ
   挟んでおいた小冊子を全員が選び終わった段階で、「栞のデザインを確認して
   下さい。クローバーの茎にテントウ虫付きのクローバー型シールが貼ってある
   人は、その栞を持ってステージの所まで来て下さい、この方たちへの記念品は
   これです。」と品物を紹介してから、各自に手渡すの。

私: それは盛り上がりそうだね。

妻: ほんとにそう思う?今回の出席者は男性が16名で女性が8名なの。女性は四つ
   葉のクローバーの栞を見たら喜んでくださるはずだけど、男性はどうかしら?

私: たとえ四つ葉のクローバーに興味を惹かれなくても、そういう方法で記念品の抽
   選をすることは思いがけなくて驚くんじゃないかな?
   そのアイデアはなかなかイイと思うよ。

妻: じゃあ、最後まで頑張って24人分を仕上げるわ。

私: だけど、せっかく集めた四つ葉と五つ葉まで使っちゃうのが、ちょっと惜しいような
   気がしないでもないな。

妻: こういう縁起物は独り占めするのじゃなくて、人様にプレゼントしてこそ、効果が
   倍増するのだと思うわよ。差し上げた人に幸運が訪れるって素敵でしょ。
   今回の記念品は故郷に関連する品物ばかりなの。これらの品物を調達するに
   あたっては素晴らしい協力者の存在があったから、本当に私はラッキーね。
   その人たちのことを、これからは今まで以上に大切にすることに私は決めたのよ。
   あなたも知っているように、Y県のK市出身者で、関東地区に住んでいる高校の
   同期生が中心になって始めた「同期会」だけど、もう足かけ30年も続いているの
   よ。K市は瀬戸内海の工業都市ということもあって、大企業に勤める父親の転勤
   により、転校を余儀なくされた同学年の人が結構いらっしゃるわ。
   そういう人のうち、例えば小学校卒業と同時に転校された人やK高校ではなく他
   の高校に進学された人も最近は仲間に加わってくださっているのが、この会の
   特徴と言えるわね。
   とても素敵なことだと思っているのよ。平均すると20名前後、多い時には30名以
   上が出席するのよ。関東地区在住者のみならず、故郷のK市やそれ以外の地域
   からも駆けつけてくださるわ。

私: 毎回、写真を見せてもらう度に、素敵な仲間たちだな・・・って僕も思っているよ。
   幹事は持ち回りで運営しているようだけど、30年もの期間、継続して開催している
   ことだけでも賞賛に値するね。一人ひとりのメンバーの人柄もいいんだ、きっと。

妻: 褒めてもらってうれしいな。あなたと違って、私たちは団塊世代だけに同学年の人
   数が多いでしょ。それで、学生時代には全く接点がなかった人もたくさんいらっし
   ゃるのよ。それなのに、この「集い」に出席すると、そんな人ともアッという間に打
   ち解けることができるのだから不思議よね。
   「故郷つながり」というのは思っている以上に、絆が強いものだと実感しているわ。

私: 同郷だというだけで親しみが倍増するのだろうね。今回もたっぷりと楽しんでおい
   でよ。だけど、ひとつだけでもいいから余分に栞を作って、僕にも頂戴ね。

妻: アッ、そうか。考えてもいなかった。じゃあ、心を込めて、あなたの分を作るわ。

・・・そして、一昨日。夜遅く同期会から帰ってきた妻は、いつも以上に嬉しそうに「集い」
の様子を語り続けました。その晴れやかな顔といったら・・・五歳は若返ったかな?
ハハハ、もちろんお世辞ですけどね。

実は、妻たちの同期会の前日に、私も東京でのクラス会に出席して十一人の級友たち
と歓談したばかりだったので、妻の気持ちはとても良く理解できました。
この年齢になると一年一年がとても貴重なものに思えるだけに、今回、妻が参加者に
配った四つ葉や五つ葉のクローバーを使った栞が効果を発揮して、特に参加者の皆さ
んの健康運を高めてくれることを祈りました。もちろん、私自身の健康運も!! 

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