「磁気テープ」の逆襲

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テープ1

< 富士フイルムデータより >

 かつて、私が慣れ親しんでいたカセットテープ・ビデオテープなどの磁気テープ。デジ
タル時代に入り、とっくに消え去ったと思っていたら、「大量のデータを安く保存できる製
品」として復活し、現在のIT産業を支えていたのです。
ビッグデータ時代に、あらためて注目を集めている磁気テープの現状を伝えます。

1.「高容量記録磁気テープ」に世界が注目

   記録できる情報量に負けてCDやDVDにとって代わられた磁気テープだったのです
  が、日本のメーカーがDVD500枚分という大量のデータを1本の磁気テープに記録で
  きる技術を確立し、「高容量記録磁気テープ」が登場しました。
  東海地震を想定した防災活動に力を入れている静岡県藤枝市は市民14万人分の
  データを3本の磁気テープに収め、これを沖縄県宮古島市で保管しています。データ
  保存がビジネスの命であるGoogleやNASAなどでも導入が広がっているのです。

2.磁気テープ復活の技術革新とは

   磁気テープの表面には、「磁性体」という金属の微粒子があり、これに磁力を加えて
  磁石とし、そのS極とN極の配列によってデータを記録します。従って、その粒が小さ
  いほど、より多くのデータを記録できます。しかし、これまでのメタル磁性体は素材の
  性質上、一定以下のサイズにするには技術的な限界がありました。
  富士フイルムが着目したのは切符の裏面に使われているバリウムフェライト(BaFe)
  磁性体です。これは「微粒子化できる」「磁気特性を維持できる」「酸化による品質劣
  化がない」「ノイズが少ない」などの特性を持ちます。この磁性体を微粒子化できたこ
  とで記録容量が大幅に増えたのです。
  磁性体は磁石であるため、互いにくっつき合う力があるので、材料の塗布液中で片寄
  ることなく分散させたり、テープに均一かつ薄層に塗布するなど、製造過程において
  高い技術力が必要です。ナノの世界は100万分の1ミリの世界です。超微粒子をナノ
  レベルで均一に塗布するのは、計算上、サッカーコート4面に1リットルの水を均一に
  撒くことに相当します。これを可能としたのはフイルム技術で培った微粒子化、有機合
  成、分散、薄層塗布などにおける高い技術力でした。

3.記録容量は今も向上中

    富士フイルムが2014年5月、世界記録を更新した記録密度は、従来の磁気テー
   プの62倍に達し、製品化されると大人の手の平ほどの磁気テープ1本に、約154
   テラバイトものデータを記録できるようになりました。CDなら20万枚、書籍なら1億
   5400万冊に相当するデータが入る計算です。また、2015年4月9日、1本当たりの
   記憶容量220テラバイトを実現する磁気テープ技術をIBMと共同開発したことを発
   表しました。これで1平方インチ当たりの記憶容量が123ギガビットになったのです。
   この1年間で更に記録容量が増大したということです。

4.技術革新を生んだ背景

    この高容量記録磁気テープの急激な進化のきっかけになったのは、ビッグデータ
   時代の到来であり、また東日本大震災でした。世界のIT企業はそのコストの安さに
   注目しました。試算では、ハードディスクに比べ、10分の1で済むといいます。
   富士フイルムは「磁気テープはハードディスクのように常時電源を必要としないの
   で、コストもCO2の排出量も大幅に削減できる。さらに30年間以上のデータ保存が
   可能で、しかもコンパクトだから、管理も容易なので、磁気テープは記録メディアの
   主流になる。」と述べ、専門家も「磁気テープはIT分野で日本が唯一、高いシェア
   を持っている製品といえる。今後も、磁気テープの需要は、データ量の増加とともに
   増え続ける。」と述べています。また、藤枝市の事例のごとく、公的機関での需要
   増も期待できます。

5.メーカー各社の動向

    高容量記録磁気テープを作る技術を持つのは富士フイルム・ソニー・日立マクセル
   の3社でほぼ100%であり、日本メーカーの独壇場です。2014年4月にはソニーが
   1本で180テラバイトを記録できる磁気テープを開発し、ドイツ・ドレスデンの磁気学
   会で発表しました。日立マクセルも2012年に微粒子化・高保磁力化した独自のセラ
   ミックアーマメタル磁性体などを採用した製品を発売しています。

6.高容量記録磁気テープの課題

    テープを使った情報記録の弱点は、大容量の中から自分が探している部分を見つ
   け出したり、頭出しをすることが不得意なこと。その点においてはデジタルの記憶媒
   体の方が優れています。そして、永久保存できるかどうかは今のところ不明で、中
   期的な保存媒体だとの指摘もされています。

1950年代に誕生してから60年以上経過した磁気テープ。基本的な構造は変わらないま
までも、技術革新により高性能磁気テープとして復活し、ビッグデータ保存の分野で目
覚ましい活躍をしているのです。

データ量を表す単位は小さい順に下記の通り。
(約1000倍単位で変わる) 
 ・ビット(Bit)
 ・バイト(Byte)
 ・キロバイト(KB)
 ・メガバイト(MB)
 ・ギガバイト(GB)
 ・テラバイト(TB)
 ・ペタバイト(PB)
 ・エクサバイト(EB)

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