ワタつながりの散歩道

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いつもの散歩に出かけた老夫婦。数あるルートの中から、今日はブルーベリーの摘み
取り畑方面を選びました。

妻 :ほら、ブルーベリーの花がたくさん咲いているわ。摘み取りは6月中旬からのようね。

夫 :待ち遠しいな。アレッ、この看板は何だろう?

妻 :ローマ字と数字が書いてあるけど、住所かしら?矢印の方へ行ってみましょうよ。

矢印に従って進むと、先程と同じ看板がありましたが、どう見ても個人のお宅です。

夫 :ネェ、ここに「営業中」って書いてある。どうやら、お店みたいだよ。

妻 :入口のガラス戸が開いているから入ってみましょうよ。ごめんくださ~い。

夫 :誰もいないけど、女性物の洋服が陳列してあるね。

店主:いらっしゃいませ。庭でお花を摘んでいたものですから、お店に誰もいなくて、驚か
    れたでしょ。ゴメンナサイ。ここにある洋服は草木染めのインド綿を現地で縫製した
    ものです。私が直接、インドへ行って仕入れてきました。

妻 :ご自分で買い付けて来られたのですか?

店主:はい、そうです。通気性が良いので、蒸し暑い日本での夏服としても最適だと思い
    ます。もう一つ、インド綿の魅力は柔らかく、フワッとしてサラリとした風合いが魅力
    だと思っています。

妻 :草木染めって、洗った時の色落ちが気になりませんか?

店主:確かに多少は色落ちしますが、徐々に馴染んで味わい深い色合いになっていくの
    が魅力のひとつだと思います。インド以外の外国の小物も置いてありますから、
    ゆっくりとご覧になってください。

夫 :袋物や小さな木製品や飾りタイルまであるよ。東京の原宿あたりに、このお店を出
    したら、お客さんがいっぱい来そうだな。

商売をするには、いささか不向きな場所にあるオシャレなお店を後にして、近くにある神
社を参拝しました。帰路はキジのペアが悠然と歩く野原を抜け、落花生畑のある農道に
出ると、かなり広い土地を二人の中年女性がクワを使って、耕している姿が目に入りま
した。すると突然、女性の一人が手を休めて、私たちに声をかけて来られたのです。

女性:こんにちは!お散歩ですか?

妻 :そうですけど、お二人は、ここを耕して何を植えるのですか?

女性:ワタのタネです。私たちは日本産のワタを守る活動をしています。外国産のワタに
    押されて今や、和棉はタネを入手することさえ困難になってきているのです。

妻 :どうして、そんなことになったのですか?

女性:日本のワタは外国産のものに比べて繊維が短いので、機械での大量生産には向
    かないんです。それに、衣類そのものがほとんど輸入品になってしまいましたしね。

夫 :あ~、そういうことですか。

女性:ワタは5月にタネを蒔き、秋に収穫します。お米と同じですね。外国産のワタの実は
    空を向いて開くのですが、和棉は地面を向きます。長雨から実を守るためでしょう
    か、日本の風土に適合した品種だと言えますね。

妻 :そういえば以前、近所の歴史民俗資料館で鉢植えの棉を見たけど、白いフワフワの
    ところは下を向いていたような気がする。あれは和棉だったのね。

女性:もう少し説明すると、外国産のワタには害虫がつきやすくて消毒が不可欠ですが、
    和棉にはあまり害虫がつかないのです。それに外国産の棉の7割は遺伝子組み
    換えをされていると聞いています。食べ物の安全性に心を砕く日本人は増えたよ
    うですが、肌に直接触れる衣類やお布団の安全にまで気を配る人はそんなに多
    くはないのです。

夫 :僕なんかは、ワタ畑というと奴隷制度があった時代のアメリカを舞台にした「ルーツ」
    という映画を思い出すな。真っ白なワタ畑のシーンが印象に残っているよ。

女性:私たちは今、毎年タネを蒔き、次の世代のタネを収穫し続けることによって、和棉の
    存在を絶やさないように頑張っているという状態です。今日は二人で土を耕してい
    ますが、他にも仲間がいるのです。

夫 :この広さなら機械で耕すほうが良いのではありませんか?

女性:機械だと土が深く掘られすぎるうえに、たくさんの土が風で飛ばされてしまいます。
    15cmほどの深さを耕せば十分なので、人力にこだわっています。もちろん、化学
    肥料は使わず、無農薬で育てます。とにかく、瀕死の状態になってしまった和棉
    の伝統を絶やしたくないと思っているのです。

妻 :こんな場所で、水やりはどうするのですか?

女性:ワタは乾燥に強いから、水やりはほとんど必要ありません。私は糸を手で紡ぐ作業
    が大好きなんです。ゆっくりと糸紡ぎをしていると、気持ちが穏やかになりますね。

妻 :糸紡ぎが幸せなひとときを紡ぎ出すってことですね。私も体験してみたいな。

夫 :ちょうど今、「明治日本の近代化産業遺産群の世界遺産への登録」が脚光を浴びて
    いる中、こうして和棉の話を伺うと、なんだか複雑な気持ちになってしまうね。

妻 :ネェ、ほんの少しだけでも土の掘り起こしを手伝いましょうよ。

夫 :そうだね。家庭菜園で培った体力と技術でお手伝いしよう!

女性:ホントですか?こんな出会いもあるんですね。嬉しいです。

二人はクワを借りて、草の根っこだらけの土を掘り起こし始めましたが、年齢を考え、
ちょっと長めのひと畝だけを耕して作業を終了せていただきました。
インド綿のお店に立ち寄ったあと、和棉の存在を知るという流れで、何だか不思議なワタ
つながりとなった12,000歩の散歩でした。

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