成虫で越冬する蝶

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厳しい寒さが続いたために、しばらく散歩を敬遠していた夫婦。運動不足が気になり
始め、大寒が近いある日の昼食後、久し振りに近所の里山を歩くことにしました。
時折吹く風が冷たいものの、やはり太陽の光を浴びながら、ゆったりと散歩するのは
気持ちがいいものです。落葉樹の美しい幹の姿に見とれたり、モズらしき鳥を見つけ
て喜んだりしているうちに、妻が突然立ち止まりました。
常緑樹の葉の裏に何か気になるものがあるようです。

妻 :ネェ、これは何かしら?真っ白い蝶のようなものが葉の裏でジッと動かずに止
    まっているのよ。

夫 :どれどれ、ホントだ。真っ白だね。蛾か蝶のどちらかだろうけど、こんな真冬に
    成虫の姿で大丈夫なのかな?羽根を広げて見たいけど、そんなことをしたら
    カワイそうだよね。

妻 :去年、成虫の姿で越冬している「ホソミオツネントンボ」を初めて目撃したわよね。
    あの時はビックリしたけど、考えてみたら成虫で越冬する蝶がいても、おかしく
    ないんじゃないの?

夫 :そうだね。成虫で越冬するトンボはイトトンボの仲間の「越年(おつねん)トンボ」
    だけだって、あの時に教えてもらったね。これも面白そうだから写真を撮ってお
    こうよ。

それから数日後、月に一度だけ開催される「里山の観察会」に出席した夫婦は、雑木
林の中で落葉樹の冬芽の様々な形態を教わっていました。すると、参加者の一人が
「ホラ、あそこにウラギンシジミがいますよ。」と常緑樹の葉裏を指差しました。参加者
全員の眼が一斉に注がれたその先には、ほんの数日前、夫婦が目にしたあの真っ白
い蝶のようなものがいたのです。

妻 :アラッ、これは数日前に見たのと同じものよ。ウラギンシジミ・・・っていうんだ。

園長:それはシジミチョウの仲間で、成虫の姿で越冬する蝶なんですよ。

夫 :やはり、成虫の姿で越冬する蝶が存在するんですね。

園長:いますよ。モンシロチョウと同じ仲間のキチョウなんかもそうですね。成虫で越冬
    するのは、かつて南の方から渡ってきた蝶に多いようです。

植物観察会の進行を邪魔してはいけないと思い、それ以上の発言を控えていた二人でし
たが、観察会終了後に、先程、ウラギンシジミを見つけた女性との立ち話が始まりました。

女性:実は私、成虫で越冬する蝶に関心があって調べてみたんですよ。そしたら、蝶の
    仲間の1割ほどが成虫の姿で越冬するらしいんです。

夫 :そんなに多いのですか。知らなかったです。もう少し詳しく教えてくださいよ。

女性:日本にいる約270種の蝶の大半は「卵」「幼虫」「サナギ」で越冬します。でも、さっ
     きの「ウラギンシジミ」のような「成虫越冬型」が約1割いるそうですね。

夫 :成虫越冬型の蝶はオツネントンボのように特別な種類に限定されているのですか?

女性:キタテハ、テングチョウなどのタテハチョウ科の一部が半数以上を占めており、次
     いでムラサキシジミ、ウラギンシジミなどのシジミチョウ科の一部、そしてキタキ
     チョウ、ツマグロキチョウなどのシロチョウ科の一部が越冬します。このように科
     をまたいでいますので、特別な種類に限定されているわけではないようです。
     でも先程、園長先生が説明されたように、越冬するのはかつて暖かい南から来た
     ものが大部分だと考えると、科をまたがっている理由も納得できますね。
     それにしても、成虫の姿で冬を越すのはかなりのリスクがあると思いますよ。

妻 :そうですよね。

夫 :成虫で越冬するのは雌雄両方なんですか?

女性:その辺の観察記録も調べてみたのですが見つかりませんでした。冬眠前に交尾し
    て雄は死に、雌だけが卵を抱いて冬眠または休眠して、食料が手に入る春に産む
    のか、それとも雄雌共に冬眠または休眠して春に交尾してから卵を産むのか、ど
    ちらかでしょうね。私も確認したいんですよ。

妻 :ウラギンシジミは葉っぱの裏に止まっていたけど、他の蝶たちはどんなところで越
    冬しているのかしら?あまり見かけませんよね。

女性:私の田舎では薪ストーブを使っているのですが、積んである薪の束の間には色々
    な成虫越冬昆虫がいます。蝶たちもその中にいますよ。温度変化の少ない北側の
    場所が多いと思います。たぶん、越冬をする目的で、どこか遠くへ移動する種類は
    少ないと思いますよ。見つけにくいのは危険を避けているからでしょうね。

夫 :日本で唯一の渡り蝶である「アサギマダラ」は越冬という形を取らずに、渡りという移
    動方法で冬をやり過ごしているんですよね。

妻 :ところで、成虫の姿で越冬する蝶の寿命は秋から春の期間になるのですか?

女性:簡単に寿命といっても種によっても違いますし、同じ種でも成虫になる時期だとか、
    生息する地域によっても違いますよ。成虫の姿で寿命が長いのはテングチョウで
    す。6月頃に羽化して越冬し、翌年の春に卵を産むまで約1年間の間、成虫でい
    ます。普通のモンシロチョウなどは成虫でいるのは2~3週間で、1年に何度も世
    代交代を繰り返します。そして、北海道の大雪山に棲む高山蝶は夏が短いので、
    2年かけて成虫になるそうです。

夫 :いろいろと教えていただいて、ありがとうございました。

こうして、成虫の姿で越冬する蝶がいることを初めて知った夫婦。自然界で生命をつなぐ
手段は様々です。懸命に生き抜く昆虫たちの営みに気付くのも、散歩をする楽しみの一
つです。これから先、どんな出会いや発見が待っているのでしょう。今後の散歩では、観
察眼をどんどん磨いていくことになりそうですね。

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