六人の僧と地蜘蛛(ジグモ)伝説

DSCN6548-001

 

昔むかしの話です。布教と修行のため、托鉢をしながら全国を行脚している六人の僧がいました。
ある村の前で僧たちは顔を見合わせて、立ち止まってしまいました。全く人の気配がしないので
す。見回せば、畑や家の周辺はちゃんと整頓されています。村人たちは一体どこへ行ってしまっ
たのでしょう。

一の僧:ごく最近出て行ったようじゃが、何が起きたのであろうな?
二の僧:とても急いで出て行ったようだね。
三の僧:天変地異が原因だとは思えないし、疫病でもなさそうだ。
四の僧:考えられるのは、何らかの恐怖、それも村人全員の命に関わる恐怖からの逃避?
五の僧:さぁ、それはどうかな?手分けして、原因を探ってみようではないか。

六人の僧は二人ずつ三組に分かれて、村の隅々を見回って歩いたあと、村で一番大きな家の前に
集まりました。

六の僧:あの裏山を見てくれ。林の一部が白くなっているようにワシには見えるのじゃが、皆には
    どのように見えるかな?ワシはクモの糸だと思うが・・・
一の僧:確かにクモが巣を張っているようじゃが、かなり広い範囲に広がっているぞ。とても、並
    みのクモだとは思えない。クモだとしてもかなり巨大なのではないかのう?
    この屋敷の周りや畑には、白い糸がたくさん落ちている。風で飛ばされて来たのだろう。
    かなり厄介な相手が潜んでいるようじゃな。
二の僧:村人の恐怖の原因はそれかも知れんね。戦って勝てる相手ではないと考え、被害がおよぶ
    前に村を捨てたということかもしれない。
三の僧:ヤヤッ、クモの脚のようなものが出てきたぞ。
四の僧:やはり、クモか。脚の大きさから考えるに、かなり大きいぞ。
一の僧:この世のものとは思えないな。風に乗ってくる匂いからして、異界から迷い出てきたモノ
    のようじゃ。一旦、この世に降りたものは異界へは戻れないそうだから、あいつは、ここ
    で生きていかねばならない。さすれば、村人との衝突は避けることができないぞ。
    しかし、何とか殺生をせずに済む方法はないものか。
五の僧:巨大であれば、食べる量も多く、やがて家畜や人を襲うのも時間の問題だろう。だが、異
    界とこの世では食べ物が大きく違うというから、この場に適応して生き長らえることは難
    しいと思うのじゃが。どうじゃろうな?

六人の僧があれこれと相談を続けていた、その時です。バリ、バリッと裏山の木々の倒れる音が聞
こえました。そして現れたのは、やはりとてつもなく大きなクモです。巨大グモはユックリ、ユッ
クリと僧たちの方へ近づいてきます。しかし、その足取りは弱々しく、上半身はやせ衰えているの
に、お腹だけは大きく膨らんでいました。どう見ても、息絶え絶えの様子です。やがて六人の僧の
前にたどり着くと、ジッと動かなくなってしまいました。

六の僧:どうやら、この巨大グモは私たちがここにいることを知って、出てきたように思えるが、
    皆はどう思う?
一の僧:間違いない。この世に適応できなかったのだろう。衰弱がひどいな。この様子では、まも
    なく命を終えることだろう。
二の僧:我々に助けを求めて出てきたように思えるね。お腹には卵をいっぱい抱えているみたい
    だ。私たちにこの卵の命を託したいと思ったのではないのかな。
三の僧:例え、この卵が孵っても、巨大グモとして成長して、ここで生きていくことはできないは
    ずじゃ。他の姿に変えて、この世で生きていけるようにしてやりたいものだ。
四の僧:ワシに良い考えがある。いっぱいあるクモの糸を使って袋をたくさん作ろう。そして、卵
    を一つずつ入れるのだ。
五の僧:四の僧の考えはわかったぞ。いい考えだ。早速はじめよう。

六人の僧がクモの糸で袋作りを始めると、一人の男がソロリソロリと近づいて来ました。彼はこの
村の村長で、様子を確かめに来ていたのです。そして、見知らぬ六人の僧の行動をジックリと観察
していたようです。

村長 :この巨大グモは死んだのでしょうか?この卵が孵化したら私たちの脅威になるのではあり
    ませんか?
六の僧:巨大グモはすでに息を引き取りました。この卵の命を私たちに託したのです。このように
    卵を袋に入れたあとが大切なのですよ。
一の僧:人に危害を加えず、土の中で過ごす「地グモ」として生き延びてもらうのです。
村長 :分かりました。村人全員を呼び戻し、袋作りのお手伝いをさせていただきます。

村長の呼びかけで村人全員が戻りました。六人の僧から袋作りを学び、その袋に巨大グモの卵を入
れていきました。全部の卵を袋の中に収めると、六人の僧は全ての袋を一箇所に集めて、祈祷を始
めました。しばらくすると、巨大グモの卵が徐々に小さくなり、目でやっと分かるくらいの小さな
卵になりました。するとその時、横たわっていた巨大グモの姿が徐々に透き通っていき、やがて消
え去ってしまいました。きっと安心したのでしょう。

二の僧:巨大グモはもういませんし、子供のクモも地上に出てくることなく、土の中で生きていき
    ます。皆さんは今まで通りの穏やかな生活に戻れますよ。
村長 :お坊さまたちのお陰で救われました。村民一同、心より感謝申し上げます。

「地グモ」は土の下で袋の中に潜み、エサとなる虫が袋に張り付いて来るのを待つ生活をしていま
す。このような生態は六人の僧が祈祷中に教えた生活の知恵なのです。異界の存在だった巨大グモ
の子孫である地グモは、こうして人間と同じ世界で生活するようになりました。しかし、地グモが
人間の目に触れることは滅多にないのです。
六人の僧が立ち去ったあと、この村には六地蔵が祀られ、「六人の僧と地グモ伝説」として語り継
がれていきました。ホントかな?

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。