風流 「秋に鳴く虫」 談義

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♪ あれマツムシが 鳴いている   チンチロ チンチロ チンチロリン
    あれスズムシも 鳴き出した   リンリンリンリン リ~ンリン
      秋の夜長を 鳴き通す     ああ おもしろい 虫のこえ ♪

永 :おや、かなり薄暗くなっているのに、庭のベンチに座って何をしているのですか?
美井:永さんじゃないですか。こんばんは!今、虫たちの声を聞き分けているのですよ。
永 :風流な趣味をお持ちなんですね。我が家の庭も夜になると、虫の鳴き声で賑やか
    ですが、どれがどの虫の鳴き声なのか、さっぱり分かりません。
    いったい秋に鳴く虫はどれくらいの種類がいるのでしょうかね~
美井:日本には450種ほどのバッタ目の昆虫がいるようですが、そのうち、音を出すの
     は約350種でキリギリス類は129種、コオロギ類は110種が知られています。
永 :コオロギは「コロコロ」、スズムシは「リーン、リーン」、マツムシは「チンチロ、チン
    チロ」、クツワムシは「ガチャガチャ」、ウマオイは「スイッチョン、スイッチョン」と
    聞いたことがありますが、本当にそんな風に鳴くのですか?
美井:まぁ、大まかに言えばそうですが、聞こえ方は人それぞれですからね。これらの
     虫の多くは前翅(まえばね)をこすり合わせて鳴くんですよ。
永 :小さな虫が前翅をこすりあわせるだけで、どうしてこんなに違う音を出すのか、
    さらになぜ、あんなに大きな音が出せるのか不思議ですよね。 
美井:それは音を作り出す翅に仕掛けがあるのです。こすり合わせる2枚の翅は、右と
    左で構造が違うんです。右の翅にはヤスリのようなギザギザが付いていて、その
    ギザギザを左の翅でこすっています。
    さらに、翅は音を大きくする共鳴板にもなっています。種類による鳴き声の違いを
    一言で言えば、それぞれ固有の構造の翅を持っているということでしょうね。
    鳴くのはメスを呼ぶためだから、ほとんどがオスです。
永 :以前、「虫のこえ」のような童謡は外国人には作れないのではないかという話を聞
    いたことがあるんですが、その理由は分かりますか?
美井:キーポイントは擬音語(擬声語)じゃないかと思いますよ。世界中の言語の中で日
    本語は特に擬音語が発達しているようです。歌詞の中に擬音語が使われている
    例は多いです。
    擬音語が少ない言語では、このような歌詞は作りにくいでしょうね。
永 :そういうことですか、なるほどね。
美井:「日本人の脳」の著者、角田忠信氏によると、人間の脳は右脳と左脳に分かれて
    いますが、右脳は機械音や雑音や楽器音を処理し、左脳は人間の声を言葉とし
    て理解する分野を受け待つそうです。
永 :どうやって調べたんですか?
美井:左耳から入った音の情報は右脳に行き、右耳から入ると左脳に行く、という交叉
     状態になっているようです。そこで、左右の耳に同時に違ったメロディーを流し
     て、その後で、どちらのメロディーを聴きとれたかを調べると、常に左耳から聴
     いた方がよく認識されている事が分かったんです。右脳で認識するということ
     ですね。
     次に、違う言葉を左右から同時に聴かせると、右耳から入った言葉の方をよく
     認識したんです。すなわち言葉は左脳で認識するということです。
永 :ほう、そういうことですか。
美井:ここまでは日本人も欧米人も一緒ですが、虫の音など自然界の音をどちらで受け
    とめるかというと、欧米人は楽器音や雑音などを処理する右脳、日本人は言語
    を処理する左脳で受けとめることを角田氏は明らかにしたのです。
永 :だとすると、日本人は虫の音を「言葉」として聞いているということ?
美井:日本人は声または言葉として聞いているから、文字化できるのでしょう。擬音語が
     発達したのも、この脳の反応の仕方に理由があるのかもしれませんよ。
永 :それは日本人という民族特有のものなのですか?
美井:この特徴はポリネシア人にも見られますが、中国人や韓国人は西洋型を示すそう
    です。さらに興味深いことは、日本人でも幼児期に外国語を母語として育てられる
    と西洋型となり、外国人でも日本語を母語として育つと日本型になるというので
    す。脳の構造というより幼児期にまず、どの言語を教わったのか、という問題らし
    いですよ。
永 :なるほど!でも、それだけでしょうかね。何か、しっくりこないな?
美井:もうひとつ、日本語が母音主体の言語であることにカギがあるようです。英語など
    は子音主体の言語なので、母音は子音を含む音節単位のものでしか言葉として
    脳が拾わないのですね。従って単純な自然界の音などは機械音・雑音として認
    識されるらしいです。
    一方、日本人は子音も母音も左脳で受け止めるのだそうです。母音の一つ一つ
    に意味を持つ日本語の存在が日本人の脳に特殊な反応形式を育んだのでしょう
    かね。脳幹にあるスイッチの入り方が日本人だけ特殊なようで、自然界の単純な
    音も言語脳である左脳が認識するのだそうです。
    虫をはじめ、生きとし生けるもの、さらに自然界にある全てのものが「声」や「思い」
    を持つという日本人の自然観が根底にあるような気もしますよね。
永 :分かりました。擬音語の豊富さと虫の音を「声」として聞いていること。そして、日本
    人のもつ自然観や感性が我々に「秋に鳴く虫」の風情を感じさせるのですね。
    とても面白いお話でした。ただ、幼児期に外国語を母語としたバイリンガルの日本
    人は虫の音をどのように感じているのか、知りたくなりましたよ。
美井:ホント、気になります。硬い話になって、とても風流とはいきませんでしたね。
永 :最後にもう一つ、虫の声をしっかりと聞き分ける方法はあるのですか?
美井:実はネ、子供の図鑑を読んでいたら、『1時間、頑張って聞いていると分かるよう
    になる』と書いてあったんですよ。だからこうして聞いているのです。
永 :ハハハ、なるほどネ。じゃあ、私も家に帰って挑戦してみましょう。
美井:明日、何種類ぐらい聞き分けられたかを教えてくださいね。
永 :ええ、童心に戻って、1時間ほど耳をすませてみますよ。

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