秋の七草に寄せて

 

奈良時代に山上憶良が詠んだ二首の歌。 

  秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り
      かき数ふれば 七草(ななくさ)の花       巻八-1537

  萩の花 をばな 葛花 なでしこの花
      をみなえし また藤袴 朝貌(あさがお)の花    巻八-1538

この歌が現代人にまで脈々と引き継がれ、秋の七草として定着しているのですが、
最後に出てくる「朝貌」については諸説があり、ムクゲ・キキョウ・ヒルガオ・アサガオ
などがその候補となっています。

今は桔梗(キキョウ)が最有力とされているようですが、候補の花はどれも漏斗(じょう
ご)型の花であることが、とても興味深いところです。
山上憶良さんが目にしたアサガオは何だったのでしょうか?

「をばな」は尾花。ススキの穂が伸びた様が動物の尻尾に似ていることからこのような
名になったとか。空き地などではセイタカアワダチソウと勢力争いをしているかのごとく、
スクスクと立っています。西日を浴びて金色に輝く様は実に美しいです。

「葛」の生命力は旺盛で、その勢力の伸ばし方には圧倒されます。花も美しいのです
が、葉の占める割合の方がダントツに多いので、目立たぬように咲いているように見
えてしまいます。
今では葛粉も高価になりました。たまに風邪をひくと、母が葛湯を作って飲ませてくれ
たことを懐かしく思い出します。

「萩」が秋の代表選手であることは、その字面から見ても文句無しでしょう。
秋の奈良旅では白毫寺や元興寺極楽坊の萩を見逃すわけにはいきません。
あの風情には比べようもありませんが、今、我が家の庭でも萩が咲いています。

「をみなえし」に女郎花の漢字を当てたのは平安時代以降らしいのですが、数日前に
散策した公園には黄色い粟粒を沢山乗せたようなヲミナエシが風にユラユラとそよぎ、
少し離れた場所には白い花のオトコエシ(男郎花)も咲いていました。
もっと近くで咲きたかったんじゃないかな?なんて思っちゃいました。

最近、「なでしこ」と「藤袴」は野の花とは言い難いほど、目にする機会がありません。
ですから、私としてはこの二つを他の花に置き換えたくなりました。ヒガンバナとワレ
モコウなどはいかがでしょうか?

「ヒガンバナ」に対して、あまり良いイメージを抱かない人が多いと聞きますが、地面か
らツンと茎を伸ばし、花火のように咲く花は強烈な印象です。
青空の下、黄金色に実った稲穂が広がる田んぼを縁取るヒガンバナの列は、まさに秋
の景色の一級品。自転車で走りながら見た明日香の風景が目に浮かびます。
またしても奈良。

「ワレモコウ」は吾木香、吾亦紅などの漢字を当てられますが、チョット見では花に見え
ないところに味わいがあります。
漢字とは関係なく「我も恋う」の方へイメージが膨らむのはなぜでしょうか。

ハギ・ススキ・ワレモコウ・クズは我が家に生えています。クズは家の裏側で、いつの間
にか蔓延し、いくら刈っても根絶やしにすることができません。
きっとあの場所に居たいのでしょう。

さて、山上憶良さんが詠んだ七草は、どれも薬効があります。もしかしたら、ただ花の名
前を列挙しただけではなく、何か深い意味があるのかもしれません。
そんなことを考えていると、なかなか寝付けず、秋の夜は益々長くなってしまいそうです。
眠りについたら、ついたで、奈良を訪れる夢を見て熟睡できなくなるかもしれません。

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