分子化石が古代生物を蘇らせる

マンモス-001

 

博物館などで恐竜の化石が展示されているのを見て、今の科学力をもってすれば、
生身の姿で蘇らせることができるのではないかと、考えたことはありませんか?
ところが、化石からは再生のカギを握る遺伝子DNAなどの生体成分が取り出せない
ので、生きた恐竜を誕生させることは難しいのです。
一万年以上の長期にわたる地層中での保存中に、骨の成分である炭酸カルシウム
の結晶構造が変化して方解石などになっているからです。文字通り「石に化けた」の
です。恐竜の化石は太古の生物の習性や生態を知る重要な手がかりです。
でも、太古の生物を当時のままの姿で見るためには「石に変化した骨」だけでは不十
分です。

当然ながら、生物の体は炭酸カルシウムだけでなく、筋肉などを構成するタンパク質
や遺伝情報を持つDNAなどの有機物を中心とした多種多様な生体分子から構成され
ています。これらは骨の石化の過程で消えてしまうのでしょうか?
例えば、太古の微生物や植物の有機成分が高温高圧下の深い地層で、燃えやすい
成分に変化した石油や石炭があります。これも化石の一種と言えるでしょう。
ここからDNAなどは取り出せないのでしょうか。残念ながら、石油や石炭は元々の生
物の有機物成分とは全く異なる化学構造に変化しているのです。骨の石化と同じよう
に、結晶構造の大きな変化が生じているのです。

こうした背景から、長い間、DNAなどの生体分子が化学構造を変えずに化石中に残る
ことなど、想像すらできませんでした。
ところが、1954年にタンパク質の構成成分であるアミノ酸が3億8千年前の魚の化石か
ら発見されたのです。
そして検出技術の進歩により、構造がもっと複雑なタンパク質やDNAが次々と発見され
るようになりました。
このように化石の中に見つかるDNAなどの生体分子を「分子化石」と呼びます。古代生
物の実像に迫る新しい素材が見つかったのです。
今、この分子化石の研究が注目されています。

映画「ジェラシックパーク」は樹液の化石であるコハクの中に閉じ込められた蚊から、恐
竜のDNAを取り出して復活させるという話でした。
現実には、コハクの中の蚊から見つかるDNAは、残っているといってもボロボロに分断
されていますので、情報が断片過ぎて、超飛躍的な技術革新が実現しない限り、昆虫
復活などは不可能です。

しかし近年、古代生物の復元が期待される分子化石が見つかりました。2002年にロシ
ア北部の永久凍土層に埋もれていたマンモスの脚の一部が、肉や皮膚、体毛までが
保存された状態で発見されたのです。
ここにはDNAも非常に良い状態で残っていることが期待できるのです。その年、ロシア
と日本の共同チーム「マンモス復活プロジェクト」がスタートしました。
このマンモスの脚の細胞からDNAを取り出し、マンモスに近い種類とされるアジア象の
卵子に移植してクローン・マンモスを誕生させるプロジェクトです。
しかし、すでにプロジェクト発足から何年も経過していますが、いまだに進展の報告が聞
こえてきません。おそらく、一万年という単位ではDNAは大きく損傷されているのでしょ
う。損傷のないDNAの確保が必要なのです。

こうしたなか、2008年にマンモス復活につながる技術開発のニュースが発表されまし
た。理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターのチームが、マイナス20℃で16
年間保存されていたマウスの死体から細胞の核を傷つけずに取り出すことに成功。
さらに核を卵子に移植する方法を開発、4匹のクローンマウスを誕生させました。
つまり、冷凍死体を使って実際にクローンマウスがつくれることを実証したのです。

更に、2013年5月、ロシアの科学者らは、マンモスの死骸(推定60歳、雌のマンモス)
の中に残っていた血液を採取することに成功したと発表しました。
この発見でクローン技術を使ったマンモス復活プロジェクトが加速する可能性が出てき
ました。韓・ロ・米の合同チームの成果が待たれます。
しかし、「血液が保存されていても、見つかった死骸に無傷の細胞やDNAが残ってい
るかどうかといえば、その可能性は非常に低い」との意見もあり、ハードルの高い取り
組みになりそうです。

DNAは生物の死の瞬間から崩壊を始めます。そのため、古生物学者が今回のマンモ
スから採取できる遺伝物質も、断片的なものにとどまる可能性が高いのです
それでは全てのDNA は存在部位に関係なく、同じように崩壊するのでしょうか?
実は精子の頭の部位のDNAはかなり長期間、崩壊されずに保存されるという研究結
果が発表されました。すなわち、新鮮な精子を持った冷凍マンモスが発見されると復
元の可能性が高くなりそうなのです。
今、シベリアでは新鮮な精子を持った冷凍マンモスの探索が続けられています。

こうして良いDNAが得られたとしても、次の過程であるクローン技術の成功率は、最も
研究が進んでいるヒツジやウシでも数%程度ですから、DNAの状態が不安定なマン
モスを復活させるには多くの困難が予想されます。
そして最後の関門は生命倫理の問題です。絶滅したマンモスを蘇らせても良いもの
のでしょうか?大きな壁が立ち塞がっています。

これらの問題が解決されたなら、私たちは将来、蘇ったマンモスを動物園などで見る
ことができるかもしれません。私の生存中には無理な話でしょうけれど。

写真は The Daily Mail (2012年4月)より拝借

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