大雪とカワセミと

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かつて経験したことがないほど降り積もった大量の雪がほとんど溶けて、日陰の場所に

だけ雪かきで集めた塊が残っている、そんなある日の午後。お気に入りの場所である

「自然観察の森」の樹木や鳥たちの様子が気になり始めた老夫婦は、デジタルカメラと

ビデオカメラを手に出かけることにしました。車中では夫婦の会話が弾みます。

妻:我が家の片流れ型の駐車場は雪の重みで支柱が曲がり、危うく車に被害が出るとこ

   ろだったわ。早めの雪落としと塩ビパイプでの補強で、屋根の傾斜が進むのをか

   ろうじて食い止めることができたけど、車まであと3cmという危機的状況だった

   わね。庭木も数本折れてしまったし。

夫:最初に降った雪が思いのほか大量だった上に、続いて降ったのが水分を多く含んだ

   重い雪だったからね。

妻:雪かきで酷使した腕と腰がまだ痛いけど、「自然観察の森」の状態がとても気がか

   りだわ。鳥さんたちは大丈夫だったかしら。

夫:久し振りにカワセミに会えるといいな。

妻:私は植物の冬芽の状態や、梅の開花状況を確かめるために3週間前にも行ったけ

   ど、今年は冬鳥たちの数が少ないような気がしたわ。それに、常連さんの話に

   よると、カワセミの姿を目にするのは稀だそうよ。

   よほどラッキーじゃなきゃ、会えないわね。

夫:元気な姿を見たいんだけどな。ところで、野鳥撮影の心得は頭に入っているよね。

妻:心得?ピントが合っていれば、それでいいんじゃないの?

夫:もちろんピントが合っていなければ、話にならないさ。そもそも、君はどこにピント

   を合わせてるの?

妻:鳥の眼よ。

夫:ほらほら、そこから間違ってるね。鳥を撮影する時は眼の後ろの耳羽にピントを合

   わせるんだ。その方が顔も体もクリアに写るそうだよ。

妻:ヘ~ェ、そうなの?覚えておくわ。他にも心得があるの?

夫:ウン。背景の選び方だ。主役を引き立てるためになるべくスッキリした背景を探す。

   空を入れると白っぽくなっちゃうよ。もちろん、構図も大切だね。いつも真ん中

   に被写体を置くのではなく。鳥が向いている方向に空間をあけて撮ってごらん。

   できればISO、絞り、シャッタースピードなども色々と変えて撮影しておくとイイよ。

妻:フ~ン、いつ飛んでいくかもわからない鳥を写すのに、そんな余裕があるかしら?

 目的地の駐車場で車から降りた二人は早速、カワセミがいそうな池に向かいました。

途中、雪の重みで折れてしまった木の枝や無残にも裂けてしまった木の幹を見て、何

度ため息をついたことでしょう。これらの木々に足を止めて休んでいた鳥たちは、い

つもの場所を失い、困っているのではないかと心配です。

夫:思った以上の被害だ。葉が茂っている常緑樹ほど、枝が折れちゃったようだな。

   後片付けも大変だ。

妻:あら、マンサクの花よ。あまりの寒さに縮こまって震えているようだわ。

夫:早春に先ず咲くから「マンサク」という名になったという説があるけど、

   ホントかな?

妻:さあね。ようやく池に着いたわよ。

夫:オッ、あそこの木の枝に止まっているのはカワセミじゃないか?

妻:ホントだ、居るよ!

 池の手前に設置されたハイド(観察用の壁)の穴から覗き、カワセミを目視した妻

は大急ぎでカメラを構えました。ハイドからかなり離れた枝に止まったアイドルは美

しいブルーの背中をこちらに向けて、悠然としています。しかし、ものの2分もすると

軽やかに飛び去ってしまいました。あとに残ったのは虚しく揺れる細枝だけです。

夫:ア~ァ、つかの間の出来事だったな。だけど、出会えて良かったよ。

   元気そうだったね。

妻:無事だったのね、よかった~。さっき聞いた撮影の心得を実行する間なんて、全く

   なかったけど、姿を見ることができたのはラッキーだったわ。慌てて3、4回は

   シャッターを切ったけど、ちゃんと写ってるのかな~。

   恐いから確認するのは家に帰ってからよ。

夫:恐いなんて、柄にもない発言だな。

妻:エッ、何か言った?

夫:いや、別に。僕のビデオカメラは出番なしだったよ。

   もう少し園内を回ってみようか。

 足を伸ばした園内のあちこちでも、枝がポッキリと折れた木々を目にしました。

毎年、濃いピンクの花を咲かせていたハナモモの大木も、特にたくさんのツボミを付

けた枝が幹から裂けた状態で、痛々しい限りです。梅園の老木にも今回の降雪は厳し

過ぎたようです。木々のかわいそうな様子を目にして、カワセミに出会えた喜びも半減。

今回の大量降雪により、今だに孤立したままの集落があるようです。

自然災害が次々に襲ってきている昨今。これらの脅威にどう向き合えばいいのか・・

カワセミの美しい羽色を心の目に焼き付けながらも、自然と共に生きている我々人間

の心構えについて考えざるを得なくなった老夫婦。

帰路の車中では交わす言葉もありませんでした。

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