六人の僧と雪の大王

ラッセル-001

ありがとう

 

昔、布教と修行のため、托鉢をしながら全国を行脚している六人の僧がいました。

僧たちは昨夜からの大雪に覆われた山道を登っています。

一の僧:いやはや、お正月そうそう、大雪に見舞われてしまったぞ。このあたりは吹き

     溜まりになっていて特に雪が多いな。ひとつ、掛け声をかけながら、この難

     所を抜けることにしましょう。セ~ノ、ラッセル!ラッセル!ラッセル!

二の僧:ラッセル?初めて聞く掛け声だな?どんな意味?

一の僧:知らないね。自然に口から出てきたんだ。

三の僧:不思議な言葉だが、調子が良くて元気が出るじゃないか。それで行こう。

     ラッセル!ラッセル!

四の僧:同感だ。お経を唱えながら進むより元気が出るぞ。

五の僧:これこれ、言葉を慎みなさい。だが、いい響きで力が湧くぞ。

     ラッセル!ラッセル!

六の僧:あそこに見えてきたのが大杉のようだな。そばに小屋があると聞いているから、

     そこでひと休みしよう。あと、ひと頑張りだ!ラッセル!ラッセル!

吹き溜まりの難所を通り抜けた僧たちは、しばし歩みを緩めました。話題にのぼったの

は、お白州に引き出された村のことです。

一の僧:ニセ物呼ばわりされて、お白州に引き出されるとは予想外の出来事だったが、

     あの村では雪が降る前に、新しい水路を確保する事ができて本当に良かった

     な。

二の僧:春になれば、滝から落ちる雪解け水が新しい水路を通って田畑を潤してくれる

     はずだ。実りも豊かになるだろう。役立つことができて嬉しいよ。

三の僧:お礼に村人から頂いたこの笠は優れものだぞ。大きいから体全体を雪から守っ

     てくれる。ありがたいことだ。

四の僧:本当にこの笠は丈夫で、かぶり心地も良い。村人たちの長年の知恵が詰まって

     いる編み方なのでしょうな。

五の僧:きっと、そうですよ。おっ!小屋が見えてきた。それにしても、あの杉は大き

     いですね。枝に雪がいっぱい溜まっているぞ。

     いつ落ちてくるか分からない状態だ。

六の僧:危険を避けるために、大杉の枝の下は迂回して小屋に行くのがよさそうだ。

六人の僧が小屋の近くまで来た時、大杉のてっぺんでバサバサと大きな音がしたかと

思うと大きな雪の塊が枝に積もった大量の雪と共にドッスンと落ちてきました。

しばらくすると、落ちてきた雪の塊がのっそりと立ち上がりました。頭には烏帽子の

ようなものを付け、丸い大きな体に不釣合いな小さな顔、そして大きな目と口。

六人の僧が目の前にいることなど眼中にない様子で独り言をつぶやき始めました。

雪の大王:イテテテテ!相変わらず地上に降りるのが下手じゃ。我ながら情けない。

      手足がないからどこにもつかまることができず、難儀じゃな。

      新雪がたっぷり降ったあとでなければ地上には来れん。

      新雪は良いクッションになるからな。おや!人間どもだ。ワシの姿は雪の

      塊にしか見えないはずだから、不格好な姿は気づかれなかったじゃろう。

      しかし、不思議そうな顔をしているぞ。もしや・・・

一の僧:あの~、だいじょうぶですか?ずいぶん派手に落ちられたようですが。

雪の大王:やはり私が分かるのか。見たところおぬしたちは坊主のようじゃな。私の姿

      や言葉が分かるということは、もしかして地上界に住む優れた六人の僧と

      はおぬしたちのことか?天上界でもお前たちの活躍は有名じゃぞ。

二の僧:確かに、私たちは六人の修行僧ですが、あなたはどなたですか?

雪の大王:ワシは天上界に住む雪の大王でア~ル。見たとおり地上への降り方がヘタな

      ので、大雪が降った時にしか降りて来れんのじゃ。

三の僧:なぜ地上界へ降りて来るのですか。まさか、イタズラを・・・?

雪の大王:何を言うか!ワシがイタズラなどするわけがない。人間の子供たちが作った

      雪ダルマの修復じゃ。夜のうちに、この体に付いている雪を擦り付けて修復

      して歩いているのじゃ。歩くといっても足がないので滑るようにして動くの

      じゃがな。

四の僧:確かに、冷たいのを我慢して作った雪だるまが一晩で壊れたら、悲しいですよ

     ね。

雪の大王:こうして山の上に降り、傾斜を利用して雪ダルマのある場所へ行くのじゃよ。

      ワシはもっと頻繁に降りて来たいのじゃが、降り方が下手なので雪が積もって

      いないとワシの体が壊れるのじゃ。おぬしたち、なにか良い知恵を授けてくれ

      ないか?

六人の僧は円陣を組んで相談し始めました。ほどなく、全員がかぶっていた笠を脱ぎ

上手に重ね合わせたうえで、雪の大王に語りかけました。

五の僧:これからは、この笠を首にかけて天上界から降りてください。六つの笠が頭上で

     大きく広がって、ゆっくりと降りてくることができます。そうすれば大杉など

     も避ける余裕ができ、お目当ての雪ダルマの近くにうまく着地できると思いま

     すよ。

雪の大王:そうか!おぬしたちに会えて良かった。この笠は頂けるのだな。これからは

      この笠を利用させてもらうよ。子供たちの笑顔がいっぱい見られるぞ。

      ありがとう。

天上界にも地上界の子供たちを喜ばせるために、見えないところで活動するやさしい

住人がいることを知り、六人の僧の心はホッコリとしたのです。

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