お白州に引き出された六人の僧

お白洲

 

昔、布教と修行のために托鉢(たくはつ)をしながら、全国を行脚している六人のお坊

さんがいました。あちこちでの彼らの功績が評判となり、今では、どの村でも「幸せを運

ぶ六人の僧」の到来を待ちわびるようになりました。

もちろん、そのような評判になっていることなど、当人たちは全く知りません。ある村の

入口に来た時のことです。「六人の僧 御一行様ご逗留中」と書かれた立札が仰々しく掲

げられているではありませんか。

一の僧:おいおい、私たちはまだ、この村に立ち入っていないのに、この立札は何だ?

二の僧:「逗留中」ということは、すでに六人の僧とやらが村にいるのだな。

三の僧:私たちとは別の六人の僧が存在するとは・・・とにかく村に入ってみよう。

六人の僧が首を捻りながら、村の中に足を踏み入れると、賑やかなお囃子の音や人々

の笑い声が聞こえてきました。六人の僧は目の前をネギやジャガイモを重たそうに抱

えて、急ぎ足で過ぎようとする村人に声をかけました。

六の僧:ちょっとお伺いします。とても賑わっているようですが、今日はお祭りですか?

村人 :いや、祭りではなく、おもてなしの最中だよ。はてさて、お前さんたちは何者だ?

一の僧:全国を行脚している六人の修行僧ですが・・・

村人 :何?お前たちが六人の僧だと!六人の僧 御一行様は村の広場で宴会中だぞ。

     食が終わると、村にすばらしいお宝を残していかれるらしい。お前たちは

     六人の僧の名を騙るニセモノに違いない。お~い、みんな来てくれ。

     ニセモノの六人の僧が現れたぞ。お奉行様のところに引っ張り出してやれ。

四の僧:広場にいるのは本当に六人の僧なのですか?どうか一度、会わせて下さい。

五の僧:こう申してはなんだが、どう見ても、ここが豊かな村だとは思えぬのに、

     大事な食べ物をその方たちに与えている理由を知りたいものだ。

村人 :ニセモノが何を言うか、失礼な!確かにこの村は貧しい。しかし、六人の

     僧様が逗留された村は幸せで豊かになったと聞いている。その方たちがこの

     村に来て下さったのだ。だから、我々は自分たちが飲む酒を水で薄め、料理

     も食べたふりをして六人の僧様のおもてなしをしているのだ。

     おい、こいつらを早く奉行所へ連れて行け。六人の僧様の名を騙るとは不届き

     なやつらだ。思い罰を与えてもらおう。

六人の僧は集まって来た村人に取り囲まれ、奉行所に連れて行かれました。そして、

お白州に引き出されてしまったのです。ふんぞり返った偉そうなお奉行様の尋問が始ま

りました。

奉行 :本物の六人の僧は村の広場におられる。お前たちはあの方たちの名を騙るニセ

     モノであろう。正直に白状しないと百叩きの刑に処してやる。

六の僧:お言葉を返すようですが、本物の六人の僧は私たちなのです。どうか、広場に

     おられる方たちに会わせて下さい。必ず、私たちが本物だと証明して見せま

     すから。

奉行 :それほど自信があるなら、会わせてやろう。おい、広場の僧様たちをこちらに

     ご案内しろ。すぐに、お前たちの化けの皮をはがしてやるから、おとなしく

     しておれ。

一の僧:お伺いしますが、どうして広場の六人が本物だと思ったのですか?

奉行 :教えてやろう。日照り続きで困っていたところにあの方たちが来られ、雨乞いを

     して下さったのだ。すると、すぐに雨が降ってきた。お前たちには到底できまい。

二の僧:今の時期は海からの暖かい空気と山から降りてくる冷たい空気がぶつかり、雷

     が発生しやすいのです。小さくとも黒い雨雲を見つけたら、その下が雨になるこ

     とは誰にでも予想できますよ。おそらく短い時間の雨だったのではないですか?

奉行 :偉そうに何を言うか。確かに短い時間ではあったが、雨が降った。もっと降らせ

     たかったら本格的な雨乞いをするから、食事をさせてくれとおっしゃったので、

     村人が接待しておるのじゃ。六人の僧様を愚弄した罪は騙りの罪よりも重いぞ。

その時です。役人が転がり込むようにして、お白州に駆け込んできました。

役人 :お奉行様、大変です。広場の六人の僧様たちが消えてしまいました。私がお白

     州にニセの六人の僧が来ているので、会って欲しいと伝えたところ、着替える

     から部屋を貸して欲しいと申されました。私は着替えの部屋の前で待っていま

     したが、いつまで経っても出て来られないのです。声を掛けても返事がないの

     で、仕方なく、ふすまを開けたら部屋の中は、もぬけの殻でした。

奉行 :何!いなくなった?まさか、こちら様が本物で、本物が現れたことを知ったニセ

     モノが逃げ出したということなのか?早く追いかけて、捕まえてこい。

三の僧:お奉行様、お待ち下さい。追いかけて捕まえるのはお止めいただきたい。

     きっと、空腹に耐え切れず、こんな悪さを思いついたのでしょう。

     許してやって下さい。

四の僧:皆さまの大切な食料をたくさん食べてしまったようなので、私どもが代わりに

     償いを致しましょう。この村に入る前に調べたのですが、田んぼにつながる

     水路には大きな問題があります。新しい水路を作るお手伝いをさせて頂けま

     せんか?もうひとつの水路ができれば、お米の収穫量が増えると思うのです

     が・・・

奉行 :いやはや、本物のお坊様たちをお白州に座らせてしまうとは、誠に申し訳ない

     ことをしてしまった。濡れ衣を着せられたことに怒りもせず、村のために新

     しい水路の確保にご尽力いただけるとは本当にありがたいこと。

     どうか、よろしくお願い申す。

六人の僧は村人が知らない滝があることを告げ、そこを起点に水路を作るように指示し

ました。共同作業で水路は立派に出来上がり、翌年からは豊かな実りのある村になった

のです。水路の源となった滝は「六僧の滝」と名付けられ、村の入口と滝壺には六地蔵

が祀られました。村人は滝の周辺をいつも清潔に保ち、流れ落ちる水をとても大切にし

続けているそうです。

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