姫ネコ・アメリの気まぐれツイート―その4 <屋根の上の戦い>

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 飼い主の若夫婦の都合で、久し振りに夫の実家に預けられた私は、狙っていた冒険の

チャンスが訪れたことに興奮していました。でも、老夫婦に悟られると、首輪を付けら

れて、繋がれそうな気配がしたので、しばらくはおとなしくしていることにしました。

この家にいると、ついついダンゴムシやカナヘビそして青大将との戦いが懐かしく思い

出されます。なんとか庭に出るチャンスは来ないかと狙っていたある日のこと、思わぬ

チャンスに恵まれたのです。

 

お爺さん:お~い、屋根に登って瓦の点検をしてくるよ。退屈そうなアメリを連れて

      行ってみるとするか。屋根は高いから飛び降りて逃げる心配はないだろ

      うよ。マンション生活で学んでいるだろうからね。

お婆さん:気をつけてね。はしごは私がしっかりと押さえておくから大丈夫だけど、

      屋根から滑り落ちたりしないように気を付けてね。

お爺さん:わかった、わかった。心配いらないよ。

 

 こうして、私はお爺さんに抱かれて屋根に登りました。屋根の上から周りを見回した

とき、なぜかわからないのですが、私はこの高さから眺める景観に、懐かしさを感じた

のです。マンションではベランダにも出させてもらえないので、見えるのは空だけです。

こんなに高い場所から下を見おろしたのは初めてのことでした。

 

お爺さん:アメリや、ここからの眺めは懐かしく感じるのではないかい?お前に高い

      場所からの眺めを体感させようと思って、連れて来たんだよ。

 お爺さんの意図は理解できないけれど、高い場所にいることがとても居心地良くて、

郷愁のようなものを感じ、なんだか身が軽くなったような気がしたのです。

屋根の上にいるのは初めてなのに違和感もなく、屋根の傾斜も全く気になりません。

ゆったりと歩いている間、今までに感じたことのない高揚感で満たされていました。

屋根の端に着くと、眼下には前回来た時に青大将と戦った庭が見えます。

庭にいた時は「広い!」と感じたのですが、この高さから見ると小さな庭でした。

お爺さん:アメリ、ここにおいで!これからアメリの先祖の話をしてあげよう。

      理解できなくてもよく聞くんだぞ。5,000万年前にミアキスという小型

      の肉食獣がいて、森林で昆虫を食べていたそうだ。

      その中から草原に出て暮らし始めたのがイヌで、そのまま森林で暮らした

      のがアメリの先祖であるネコ族だと言われているんだ。

 

 ここからの眺めは遠い祖先が森林で暮らしていた記憶を蘇らせてくれるから、気持ち

が落ち着くんじゃないかい?どうだね?

私はお爺さんの手から離れて、もう一度、屋根の上を歩き始めました。そして再び屋根

の端にたどり着き、景色を眺めていた時です。遠くの空から大きくて真っ黒い影が接近

して来たのです。そして鋭い爪が目の前に迫り、私をつかもうとしました。

私はとっさに危険を感じて身を伏せました。危機一髪!身を翻した途端に、私の体は

コロコロと屋根の傾斜にそって転がり始め、このまま転がれば、屋根から落ちて地面に

叩きつけられてしまいます。

私は必死で体を立て直し、すんでのところで踏みとどまりました。私はこの時、初めて

恐怖を感じたのです。おじいさんがなにやら大声で叫んでいます。

お爺さん:大きなカラスだ。アメリ、あぶない!早く戻ってこい。カラスはまた襲って

      来るぞ。急いで戻って来~い。

 

 自分がすべきことは一刻も早くおじいさんのいる所へたどり着くことだと直感し、

走り出しました。その時、またもカラスが襲ってきたので、私は後ろ足で立って臨戦

態勢をとりました。私の構えに怖気づいたのか、カラスは私の目前で方向転換したの

です。

私はカラスが飛び去って行く姿をしっかりと確認してから、慎重におじいさんのもとへ

戻りました。私は意地っ張りだから、お爺さんには恐怖でこわばった顔など見せられま

せん。でも、正直なところ、しばらくは心臓の高鳴りが收まりませんでした。

この時以来、バサバサという羽音を思い出すたびにビクついてしまいます。私はカラス

という怖い鳥の存在を、この日、初めて知りました。

私の先祖たちも森の中で未知の異生物たちと戦いながら、生き抜いてきたのでしょう。

今回は先祖のことを知り、そのすさまじい生き様の一端を体験することができました。

お爺さんに抱かれて屋根から降りる時、私は少しだけ逞しくなったような気がしていま

した。

この家に来るたびに、いろんな経験をします。最近の私は、飼い主夫婦が旅行に出かけ

る日が待ち遠しくてたまりません。この家に来るチャンスが少ないのが残念です。

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