六人の僧と妖怪

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 むかし、布教と修行のため、托鉢をしながら全国を行脚している六人のお坊さんがい

ました。ある村の入り口まで来たとき、『妖怪の出没につき、よそ者は入るべからず』

と書かれた立て看板を見つけました。六人のお坊さんが実情を知るために村へ入ると、

人っ子ひとり見当たらず、シ~ンと静まり返っていました。

一軒、一軒に声を掛けましたが誰も出てきません。途方にくれている六人の前に、ひと

りの男が困惑した顔つきをして現れました。

 

村長 :私は村長です。村の入口に置いた立札を見なかったのですか?お坊様たちに

     災難が降りかかってはいけないので、妖怪が来る前に、この村を立ち去って

     ください。

一の僧:私たちは皆様の苦悩を救済するために行脚しています。お役に立ちたいので、

     どうか私たちの身なりだけで判断せずに、事情を話していただけませんか。

村長 :分かりました。そこまで言われるならお話します。この村にまもなく妖怪が

     やってきます。今日は子供を生贄として差し出す約束の日なのですが、子

     供は村の宝です。差し出すわけには行きません。村人全員を村外に退避さ

     せました。妖怪は子供を差し出さねば村を破壊すると言っています。

     そこで子供の身代わりに私が生贄になるつもりで、ここに残ったのです。

     妖怪には目が三つあって、体は見上げるほど大きく、口は子供を一口で飲

     み込むぐらいの大きさです。そして手も大きく、お坊様たちなら片手で三人

     ぐらい一度に掴んでしまうでしょう。恐ろしい妖怪です。

二の僧:その妖怪はいつごろ出てくるのですか?

村長 :陽が沈みかける頃にやってきます。いま太陽が西の高いところにありますが、

     あそこに見える大杉のてっぺんあたりまで沈むと、間もなくやって来ます。

三の僧:村長さん、仔細は分かりました。私たちが妖怪を退治しましょう。あなたには

     あとで頼みたいことがあるかもしれません。それまでは家の中で休んでいて

     ください。

四の僧:さて皆さん、何かいい知恵はありませんか?時間があまりないようですよ。

五の僧:妖怪は自分の力を過信しているから、かなり油断しているのではないでしょう

     か。そこがつけ目ですね。

六の僧:おそらく天上界の嫌われ者が悪さをしにやってきたのでしょう。二度と人間界

     に降りて来ないように、少し痛い目に合わせる必要があるかもしれませんな。

 

 それから暫く、お坊さんたちは相談していましたが、なんとか結論が出たようです。

そして、村長を呼び戻して何やら指示を出したところ、村長は勇んで走り去りました。

 

一の僧:私が子供に変装して、広場の木に縛られたふりをして立ちます。妖怪は生贄が

     子供だと思い、安心してかがみこんで私をつかもうとするだろうから、その

     瞬間にゆるく結んでおいた縄を解いて、裏山に逃げます。

二の僧:妖怪は生贄を追いかけてくる。そこがつけ目ですね。

三の僧:村長の話では、あの裏山は石灰岩でできているので大変もろく、鍾乳洞の穴が

     あちらこちらにあるので子供たちには入山を禁止しているそうだ。

四の僧:妖怪の体重ならば、自分の重さで穴が開いて鍾乳洞に落ちるかもしれないね。

五の僧:問題は三つの目だ。焦点をぼやかすためには、二つの目を使えないようにしな

     いといけないな。だが、逃げた生贄を追いかけさせるために、ひとつだけは

     目を残すことにしよう。

六の僧:弓で狙うのは不確実だから、槍で突くことにしよう。私と二の僧がむしろを

     かぶって生贄役の後ろに隠れ、妖怪が油断して生贄をつかもうとかがみこん

     だスキに二つの目を同時に突くんだ。大きな眼だというから確実に突けるぞ。

     突いた後は三人で裏山に逃げるんだ。必ず怒って追いかけてくるだろうから、

     勝負はそこからだ。

 

 こうして準備を整え、妖怪の出現を待ちました。太陽が大杉のてっぺんにかかった時、

妖怪が現れました。そして、のっし、のっし、と村の広場に近づき、木に縛られた子供

を見つけるとボギャ~!と一声叫んでかがみ込み、手を伸ばしました。

その時、むしろの中から二本の槍が飛び出し、確実に二つの目の玉を突いたのです。

妖怪があまりの痛さにボギャ~と泣き叫んでいる間に、三人の僧は全速力で走り出しま

した。妖怪は三人を追いかけますが、一つ目では焦点が合わないので、なかなか捕ま

えることができません。すると裏山から大声が聞こえて、山に登っていく三人の姿が

見えました。実は別の三人の僧なのですが、妖怪には判断できません。

超人的な速さで妖怪は山の三人に追いつきましたが、捕まえようとしたまさにその時、

妖怪の重さで足元に大きな穴があき、洞窟に転げ落ちました。その瞬間を待っていた

村長と村人が火のついた松明を一斉に洞窟へ投げ入れました。

洞窟の底でボギャ~と大きな声が聞こえましたが、その後は全く静かになりました。

村人は「エイエイオー!」と勝どきをあげて喜びを表しました。

 

村長 :お坊様がたのお陰で村に平和が戻りました。何とお礼を申し上げたらよいので

     しょうか。

一の僧:妖怪は洞窟の穴を伝って逃げたかもしれないが、もう人間界には来ないで

     しょう。

二の僧:これからも、村の子供たちが健やかに育ち、村の平和が続くことを願って、

     私たち六人がそれぞれ一体ずつ『わらべ地蔵』を作って置いていくことに

     しましょう。

 

 六人の僧は祈りを込めて六体の『わらべ地蔵』を作り、村を立ち去っていきました。

村人は僧たちの祈りがこもった六地蔵を村の入口に並べて、その前を通るたびに手を

合わせ、感謝しました。今もこの六体の『わらべ地蔵』は当時と変わらぬ姿で、村人

たちを見守っています。

お地蔵様は子供たちが野の花を摘んで、お供えしてくれるのがとても嬉しいようです。

メデタシ、メデタシ。

おしまい。

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