篠笛伝説

篠笛1

Scan-002

 

昔むか~しの話です。篠笛作りの名人で、上手な吹き手でもある与助という若者が、

都から遠く離れた山里に住んでいました。与助は今年も良質な篠竹を探しに、雪の残る

山に入りました。良い篠竹が生える山は藪だらけなので、まむし、スズメバチなどに出

くわすことがないこの時期が一番安全なのです。

 

与助:さて、曲がりがなくて質の良い竹はどこだ。コンコン、コンコン。

 

節の間隔が40cm以上、内径が12mm位で、真っ直ぐなものが良いとされる篠竹は、

たくさん集めても使えるのは1割程度。山の中では叩いたときの音だけが頼りです。

使えそうな篠竹を見つけると目の高さより少し下で切り取り、長いまま持ち帰ります。

 

与助:今年は良い竹が見つかったぞ。これなら音色の良い篠笛ができそうだ。

    さあ、竹はしっかり束ねたし、背負って帰るとしよう。どっこいしょ。

    あれ、動かないぞ。やけに重いな。どうしたんだろう?

 

 与助が振り返って見ると、一匹の熊が竹の束を手で押さえています。早々と冬眠から

目覚めたようです。そして、こちらを睨んで唸り声を上げ、いまにも飛びかかろうとし

ていました。

 

与助は慌てることもなく、懐から愛用の篠笛を取り出してゆっくりと吹き始めました。

♪ヒャラーリ ヒャラリコ ヒャリーコ ヒャラレロ 
         ヒャラーリ ヒャラリコ ヒャリーコ ヒャラレロ  ♪

 

 すると、不思議なことに熊はその場にうずくまり、篠笛の音色に聞きほれて、そのまま

スヤスヤと眠り込んでしまいました。熊が寝ている間に、与助は篠笛を吹き鳴らしながら

里へ戻って行きました。この噂は瞬く間に広まり、与助は熊を眠らせる笛の名手として都

にまで知られるようになりました。

 

その頃、都では乱暴な赤鬼と青鬼が出没して人々を困らせていました。誰もが怖がって

退治しようとしません。ある日、熊を眠らせた笛の名手がいるとの噂を聞いた領主は山

里から与助を呼び寄せました。

 

領主:与助よ、お前の笛の音で赤鬼と青鬼を退治してもらえぬか。それができたらお前

    の望みを何でも叶えてやろう。力を貸してくれ。

与助:出来るかどうかわかりませんが、都の人が困っているのを見過ごすことはできま

    せん。赤鬼と青鬼が出没する場所に案内してください。

領主:おお、引き受けてくれるか。早速、家来に案内させよう。

 

 こうして、与助は赤鬼と青鬼が出没する辻を見下ろす大きな松の枝に腰掛け、笛を構

えて待ちました。そこへ赤鬼と青鬼が鈴のついた鉄の棒で地面を叩きながらやってきま

した。

ジャランジャランと響く音に怯えて、人々は家の奥で息をひそめて震えていました。

 

赤鬼:今日はどの家で飯を食おうかのう。おっ、決めた。あの屋敷にしよう

青鬼:うん、あの家には美しい娘がいると聞いておる。その娘に酌をさせてうまい酒

    を飲もうではないか。

 

 赤鬼と青鬼が鉄の棒で屋敷の門を壊そうとした途端、後ろから「やめろ!」という声

が聞こえました。赤鬼と青鬼が振り向くと、大きな松の枝に篠笛を構えた若者が腰掛け

ています。

 

赤鬼:若造、わしらに命令するとは良い度胸だ。わしは命令されることが大嫌いじゃ。

    この鉄の棒で松の枝をへし折ってお前を叩き落としてやる。

青鬼:わしらの邪魔をしたな。お前も命知らずじゃのう。叩き潰してやるわ。

与助:お前たちが悪さをするのも今日が最後だ。二度と都に来ることなどできないと

    思え。

 

与助はゆっくりと篠笛を吹き始めました。

♪ヒャラーリ ヒャラリコ ヒャリーコ ヒャラレロ 
         ヒャラーリ ヒャラリコ ヒャリーコ ヒャラレロ  ♪

 

 篠笛の音色を聞いたとたん、赤鬼と青鬼はまぶたがトロンと落ち、腰が砕けて座り込

み、しんみりと聴き始めました。そして道の真ん中で大の字になって寝てしまいました。

与助の指示で耳に栓をして屋敷の影で様子を見ていた家来たちはここぞとばかりに、

赤鬼と青鬼を縛り上げました。そして大八車に乗せて、そのまま船まで運び、沖合の無

人島に連れて行きました。無人島を離れるまで、与助は篠笛を吹き続けたのです。

この島は鬼ヶ島と名付けられました。こうして都には以前の平穏な暮らしが戻ってきた

のです。

 

領主:与助、お手柄じゃったな。望みがあれば申してみよ。

与助:それでは、申し上げます。私の大好きな篠笛をお祭りの時に使っていただきたい

    のです。厄災を遠ざける篠笛の音は都に平穏をもたらしてくれる事でしょう。

    この音色を都の人々に親しんでもらえるなら、これほど嬉しいことはありません。

 

篠笛がお祭りに欠かせなくなった背景には、こんなお話があったとか。

ガッテン、ガッテン。

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