迷い込んだインコ

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―― 秋晴れの爽やかな朝、ここは地域の公民館 ―――――

Aさん:館長さ~ん、両手がふさがってるから、早く玄関のドアをあけ

     てくださ~い。

館長 :おやおや、両手を貝殻のように合わせて、一体どうなさいまし

     たか?

Aさん:すぐそこの門のところでインコを捕まえたのよ。簡単に捕まえ

     ることができたから、多分、鳥かごから逃げたインコだと思う

     の。

館長 :インコですか。取りあえずお預かりしますが、鳥かごはないので、

      この大きな紙袋の中に入れておきましょう。

      しかし、どうすればいいのかな~?

Aさん:私はこれから出かけなくちゃならないから、頼んだわよ。

     飼い主を見つけてね。

館長 :困ったな。あっ、そうだ。市役所に連絡して相談してみよう。

     もしもし、環境対策課ですか?手乗りインコらしき鳥を保護した

     のですが、どうやって飼い主を探したらいいのかわかりません。

     どうすればいいんですかね。

対策課:鳥を預かる施設はないので、鳥かごを貸してくれる職員がいるか

     どうか急いで探します。そして、捜索願いが出ているかもしれない   

     ので、早速、こちらから警察に連絡してみましょう。

館長 :ありがとうございます。鳥の特徴を言いますので、よろしくお願い

     します。そう簡単には飼い主は見つからないでしょうね。

     このインコは毛並みに乱れがないし、まるまるとして元気いっぱい

     で、紙袋の中で大暴れしています。おそらくごく最近、逃げ出した

    鳥だろうと思われます。

―― その日の午後2時過ぎ ―――――

警察 :館長さんですか?こちらは警察です。インコの飼い主が見つかりま

     した。手乗りインコが逃げたとの届け出が出ていまして、市の方か

     ら連絡を受けた鳥の特徴と一致します。飼い主さんとも連絡が取れ

     ましたので、後ほど飼い主さんから館長さんへ連絡があると思いま

     す。鳥は先月いなくなったそうですよ。届け出からほぼ1ヶ月になり

     ます。この間、よく生きていましたね。飼い主さんはとても喜んで

     いました。

館長 :それは良かった。少し前に市の職員から鳥かごが届き、紙袋から鳥

     かごへ移したところです。長期戦での飼い主探しを覚悟していまし

     たから、こんなに早く見つかって助かりました。お手数をおかけし

     ましたが、届け出があったのが幸いです。何でも届け出ておくこと

     は大切なんですね。勉強になりました。

――そのすぐ後 ―――――

飼い主:もしもし、公民館ですか?今、警察から連絡を受けてインコを保護

      して頂いていると聞きました。家族全員で大喜びしています。

      これからすぐに受け取りに伺います。

館長:お待ちしています。見つかって良かったですね。

―― その日の午後3時過ぎ ―――――

飼い主:先ほどお電話した者です。私は隣町に住んでおります。保護して頂

      いてありがとうございました。娘のペットなのですが、いなくなっ

      た日は泣いて、泣いて、仕事に行くこともできなかったのです。

      いなくなってもう1ヶ月近くになりますので、ほぼ諦めていました。

      そこへ今日の朗報です。娘にはすぐに知らせました。

      鳥かごまで用意して頂いて申し訳ありません。カゴの中のピーコは

      羽もきれいで元気いっぱいですね。何を食べてこれまで生きてきた

      のでしょう?

館長 :お宅からここまでは5km以上ありますね。車の往来が激しい大通り

      もありますし、小さな体でこの派手な模様ですから、カラスやネコ

      などに見つからずに、よく生き延びたものだと思いますよ。本当に

      良かったですね。

―― その日の夜 ―――――

館長 :ただいま~。今日はね、すごい出来事があったんだよ。1ヶ月もさま

     よっていた鳥がうちの公民館で保護されて、しかも午後には飼い主

     の手に戻ったんだ。この間、公民館と市の職員そして警察の担当者

     との連携がとてもスムーズにいったので、本当に爽やかな一日だっ

    たな。

館長の妻:なんとなくウキウキした感じで帰って来たと思ったら、そういう

       ことなの。良かったね。久々のグッドニュース!

―― 翌日の夜―――――

館長 :ただいま。

館長の妻:おかえりなさい。あらっ?昨日と打って変って、しおれちゃって

       るわね。

館長 :あぁ、ショックなんだ。昨日のインコだけどね、夜中に死んでしま

      ったんだって。あんなに元気だったのに、どうしちゃったんだう?

館長の妻:え~っ、そんな~、信じられない・・・

館長 :今朝、飼い主の方が鳥かごを返しに来られておっしゃるには、病気

      にかかっていやしないかと心配で、あれからすぐに病院へ連れて行

      ったんだって。でも、そのあと深夜になって死んでしまったそうだ

      よ。あ~ぁ、かわいそうなことしたな。預かってる間の僕たちの対

      処の仕方がよくなかったのかな~

館長の妻:う~ん、ちょっと聞いてくれる?今、ふと思ったんだけどね、そ

       のインコは飼い主の元で命を終えたかったのかもしれないわ。

       私、なんだか、そんな気がしてならないの。大切にしてくれたお

       嬢さんの手元に帰るまで、必死で頑張ったんじゃないかな。

       それほど、このインコはお嬢さんの事が大好きだったのよ。お嬢

       さんとインコの結びつきの深さを私はひしひしと感じるわ。

       ようやく大好きなお嬢さんの元へ戻ることができて、安心して命

       を終えたんじゃないかな。命を救うことはできなかったけど、飼

       い主の元に何としても戻りたいというインコの強い願いを叶える

       手助けができたんじゃないのかな?

       橋渡し役として、誰にでもやさしいあなたが選ばれたのかもしれ

       ないわね。

       あらら!ますますウルウルさせちゃったかな?

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